グラタン

その日、小腹が空いた僕は

近所のコンビニでグラタンを買った。

 

レジに立っていた店員さんは

初々しさを感じる男子高校生、

と言った様子で

まだアルバイト経験が浅いのか

緊張している様子が伝わる。

 

そんな店員さんは

グラタンのバーコードを読み取ると、

僕にこう尋ねて来た。

 

「グラタン、温めて欲しいですか?」

 

後にも先にも、コンビニのレジで

自分の願望について

尋ねられたのはこれが初めてだ。

 

僕が「温めて欲しいです」と答えると、

彼はグラタンをレンジにかけて

スイッチを入れた。

 

その時、

隣のレジに立っていた中年男性ー

恐らくこのコンビニの店長と思われる男性が

 

「温めて欲しいですか?じゃ無いだろう!

…お客さん、すいませんねぇ

失礼しましたねぇ」

 

そう言いながらグラタンを

レンジから取り出したー…その時である。

 

「アッあっーッ」

 

店長は言葉にならない声をあげた。

 

グラタンが熱過ぎたのだ。

 

レンジで過剰にグツグツ温められ、

容器がぐにゃり、と湾曲したグラタン。

 

「アッあっ熱ーッあっー!」

 

店長は顔を苦悶の表情に歪ませながら

手早くグラタンを袋に入れ、

僕に手渡した。

 

…家に帰って袋からグラタンを取り出すと、

まだホカホカと温かかった。